日本妙好人協会

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金言金行集
2021年1月12日
 
 翁(おう)が【筑前(ちくぜん)の長幼郎

(ちょうようろう)】臨末(りんまつ)の一日前、常の

教えを受けし七里恒順師は、左(さ)の書翰

(しょかん)を贈(おく)らる。
 

  病苦定めて、難忍可被爲在(しのびがたく

あらせらるべく)と推(お)し候(さふら)へども、

暫時(しばし)のことに候へば、御耐忍可被成候

(ごたいにんなさるべくそうろう)。

病床中 生来(せいらい)今日(こんにち)までの

所業は、追想するも無益なり。

栄辱(えいじょく)は獨(ひと)り滅して、昨夢

(さくむ)の如く痕(あと)なし。

 罪業は願力に消(きへ)されて、淡雪(あわゆき)

の如く形なし。

 念じて益(やく)なく用なければ、捨てゝ問ふ

べからず。

 命は一瞬に迫れば、淨土は一紙(いっし)の外

(そと)よりも近し。

 唯(ただ)願力の不思議を、仰(あおい)で喜び

たまふべし。

 今にも大悲の尊體(そんたい)

拝し奉るを喜ぶべし。

 初めて生(うま)るゝ時に、


 彌陀告(二)言諸佛子(一)

 極楽何(二)如彼三界(一)

 新往化生倶欲(レ)

 合掌悲咽不(レ)(レ)

 (阿弥陀仏が諸々の仏弟子に告げていわれる

  極楽と彼の三界とは どのようであるか

 と 新しく往生した者は皆、答えようとするが

 合掌しながら咽(むせ)び泣き言うこと能わぬ)


 さぞさぞ御楽みに可有(あるべく)

拙者も後(あと)より参り候(そうろう)間、

半座を分けて待ちたまふべし。

  南無阿彌陀佛と

 明治二十三年一月二十五日

     釋  恒順 拝




    妙好人百話より

筑前の長幼郎同行臨終前に宛てた

    七里恒順和上の書翰




金言金行集
2021年1月14日
 【義なきを義とすと知るべし】

 京都の人、探幽(たんゆう・狩野探幽かのうたん

ゆう)の書を蔵したり。

 落款(らっかん)なかりし故に、ある名筆の人を

たのんでその名を かゝしめたり。

 書は之が爲めに疵物(きずもの)となれり。

 他力は他力也。

自己一分(いちぶん)の計らひを加へなば、

遂に障(さわり)となりて往生を得ざる也。


  

  秀存語録 佐々木 月樵 撰より

      一蓮院秀存和上
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