金言金行集 |
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2020年6月13日 |
記者「然(しか)しお爺さんみたいなお人好しばかり になつたら世がたゝんと云つてるぜ」 源左「そりやそうですよ。俺が一人家にゐるでさへ 家がたゝんのに、おらみたいな者ばかり世に一ぱ いぢや大(おお)困りですよ」 かうした記者との對話の中(うち)にでる同行の言葉 は正(まさ)に立派な警句である。 尊い如来様の力に生きてゐる同行の口からは 如来様が飛び出て下さつてゐる様な氣がする。 法の園より 記者・辛川忠雄氏と因幡の源左さん |
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金言金行集 |
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2020年6月14日 |
夏の夜はすぐに更けた。 「お爺さん休まふかね」 二人は蚊帳(かや)の中に床(とこ)を並べて 入つた。床の中で私がねむたくなるまで稱名の 聲(こえ)がする。 私は佛の慈悲の中にしつかり抱(いだ)かれた 子供の如き感じでお爺さんの稱名に包まれてゐる 自分が嬉しくてならなかつた。 この邊の消息はただ同じみ佛を親とし求め、喜び 話合つてゐる皆様にだけうなづいてゐただける 信仰の尊い情緒だらうと思ひます。 この稿(こう)を終わるに臨(のぞ)んでお爺さんが 一番油にのつた時、何時(いつ)でも喜ぶ言葉を 紹介する。 三世に一佛、恒沙(ごうじゃ)に一體(いったい)、 佛の中の(一段聲を高める)大王様が我が往生 は彌陀にまかせよ、必ずまちがはしはせぬ。 人より悪い我が一番先の正客だ。 この文句を聲を高めて喜びつゝ話すお爺さんの 顔が今その時 書きつけた文字(もんじ)を讀ん でゐると浮かんでくる。 今頃爺さんはきつと暗い電燈の下の圍炉裡の そばにうづくまつて、縄でもあんでゐるだらう。 そして秋風になつて冷(つめた)い手を働かせなが ら念佛してゐるだらう。 私はこの爺さんの育てられたことが幸福でもあり、 尊くもある御大典の秋に因(ちな)んで源左同行の 言行(げんこう)の一端を紀念してをく。 (九月二十五日夜半) 法の園 十月號(473號) 妙好人源左同行と語る(下)記者・辛川忠雄氏 |
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